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COCONUTIST 2022・Spring

Philippines Report Vol.7
フィリピンの選挙

認定NPO法人アクセス 事務局長  野田 沙良(のだ さよ)さん


「麻薬捜査中に警官が人を殺しても罪に問わない」など、過激な発言で知られるフィリピンのドゥテルテ大統領の任期も、あと半年ほどとなりました。
2022年5月に、大統領や地方議員を選ぶ総選挙が予定されているのです。そこで今回は、フィリピンの選挙にまつわる、びっくりな実情をご紹介します。

 

スラム街の一角にも選挙ポスターが


ここが面白い!フィリピンの選挙活動

暮らしの中に、いつも歌や踊りがあるフィリピン。演説会では、立候補者本人が歌やダンスを披露することがしばしばあり、テレビなどでも取り上げられます。後援会が準備したダンサーたちがダンスをして、会場の雰囲気を盛り上げるのもよく見られる光景です。

候補者の名前入りのさまざまなグッズ(ボールペンや折り畳みうちわなど)が配布されるのも特徴的です。街宣車から、コインや小さく折りたたまれたTシャツなどが配られることも。次の選挙に向けて、名前入りマスクも準備され始めているようです。

 

立候補者のポスターを掲げて走る三輪タクシー

 

フィリピン選挙のキホン

選挙権があるのは、18歳以上の国民です。ただし、いま暮らしている自治体での投票が初めての人は、身分証明書と出生証明書を登録事務所に持参し、写真入りの投票人IDカードを作成する必要があります。この手続きは、投票日の6か月前までに行う必要があります。人口の1割が海外に暮らしていると言われるフィリピンですので、海外から不在者投票制度を活用する人も少なくありません。

 

ほとんどの地域で小学校が投票場となり、先生たちが受付事務を担います。投票日の5日前くらいに投票箱が設置され、それ以降は警察官が泊まり込んで警備をするのだそうです。コロナ対策が必要となる2022年の選挙では、各村にあるバスケットボールコートや多目的ホールにも投票所が設置される予定です。

 

投票用紙はマークシート方式で、候補者名のそばにある記入欄を塗りつぶします。その紙を機械で読み取り、コンピュータで集計する形式です。投票日の翌日には、マスメディア等による速報結果が報道され大勢が判明しますが、選挙管理委員会による正式発表には一週間以上かかります。

 

よくあるポスター。大統領候補と地方議員候補のセット

 

選挙がらみの暴力事件が多発

フィリピンでは、投票開始の48時間前からアルコール販売が禁止になります。また、投票日には、道路に検問所が設置され、車に銃を積んでいないかどうかのチェックも行われます。こうした規制や取り締まりの背景には、選挙のたびに多数の暴力事件が発生していることがあります。2016年の総選挙時には106件(死者192人)、2019年は43件(死者73人)の暴力事件が起こっています。2019年の選挙時は、4459丁の銃と42,430丁の凶器が没収され、5,316人が逮捕されました。
選挙運動に絡む殺人事件の動機としてよく見られるのは、地域の有力者に票のとりまとめを依頼してお金を渡したものの、そのお金を自分の懐に入れたまま票集めをしなかったり、他の候補者と二股をかけたりした場合に、報復として殺害する、というものです。

 

 

フィリピンの人に聞いてみた、「私にとっての選挙」


リザさん(30代/三兄弟を育てるワーキングマザー)

私にとって選挙は「決定する機会」です。良いリーダーとは、良いフォロワーでもあり、お手本となる人物のこと。どの人が適役か、じっくり考えて投票します。次の首長選挙では、変化が必要だと思っています。町に病院を建設しようと提案している新人に投票するつもりです。副町長候補は私の親戚で、お世話になってきた人物だということもあり、応援しています。

 

アライサさん(20代/NGOスタッフ)

人々の声を国の方針に反映させるという意味で、選挙はとても重要なものだと思います。次の大統領選で誰に投票するかは、まだ決めていません。ニュースでインタビューを見たり、候補者を追ったドキュメンタリー番組を見たりして、候補者の掲げる目標や政治姿勢を知るようにしています。首長選挙では、経験豊富で真に人々のことを思って行動してくれる人に投票します。医療機関へのアクセスを改善してくれ、地域で就労機会を増やそうとする人がいいと思っています。

日本では考えられないようなフィリピンの選挙事情のあれこれ、いかがだったでしょうか。
歌や踊りあふれる選挙運動と、その背後でうごめく「命がけの戦い」。フィリピン社会の複雑さや奥深さを少しでも感じてもらえていたら幸いです。

 


【筆者プロフィール】

認定NPO法人アクセス 事務局長
野田 沙良(のだ さよ)

フィリピンで活動する国際協力団体アクセスで、「子どもに教育、女性に仕事」を柱とした活動に従事。フェアトレードのココナッツ殻雑貨などの生産・販売も。

https://access-jp.org

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