分類 | |||
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不飽和脂肪酸 | 飽和脂肪酸(酸化に強い) | ||
長鎖脂肪酸 | 長鎖脂肪酸 | 中鎖脂肪酸(MCT): エネルギーになりやすい/ 抗菌・抗ウイルス作用/ ケトン体を生み出しやすい | |
多価不飽和脂肪酸 | 一価不飽和脂肪酸 | 牛脂/ラード | ココナッツオイル |
ごま油/えごま油/アマニ油 | オリーブオイル |
オイルの酸化について
オイルの酸化とは
オイルが酸化した状態 = オイルが錆びている状態です。体に錆を入れてしまうことにより、体(細胞)にも錆が付着します。
この錆は細胞膜の脂質にダメージを与えてしまいます。外敵からの抵抗力が弱まったり、細胞がガン化したりするほか、新陳代謝を妨げるため細胞の老化にもつながります。
だからと言ってオイルの摂取を減らすと新しい細胞膜が作られず、細胞の生まれ変わりがなくなります。
本来オイルは加熱せずに生で摂取するのが望ましいのですが、現代の食生活ではオイルを使った加熱調理をすることは避けにくい状況です。
そのため、「加熱調理をするなら酸化しにくいオイルを使うことが重要」なのです。
下の図は、よく使われるオイルとその主成分の脂肪酸を表しています。左側を頭(カルボキシル基)とし、これはすべての脂肪酸で共通しています。
その後ろに炭素が連なっており、炭素の数で「長鎖」「中鎖」の分類が変わります。炭素には4本の手があり、それぞれ炭素、水素と結合します。

ココナッツオイルの主成分・ラウリン酸。炭素の4本の手は左右では炭素と、上下では水素と結合しています。水素が隙間なく結合しているので、酸素の入り込む隙間はありません。

オリーブオイルの主成分:オレイン酸。『二重結合』と呼ばれる隙間があり、水素が欠けた部分が1か所あります。本来水素と結合するはずの余りの手は、炭素と結合しています。 この『二重結合』は非常に不安定なため、酸素が入り込みやすく、二重結合が離れて酸素と結びつきます。これがオイルの酸化です。

ごま油の主成分:リノール酸と、えごま油の主成分:αリノレン酸。『二重結合』が複数個所あるため、オレイン酸(オリーブオイル)よりもさらに酸素と結合しやすくなります。えごま油やアマニ油を加熱してはいけないのはここからきています。
オメガの分類について
オイルのことをいろいろ知っていくうちに、「オメガ」という分類について耳にすることがあります。「ココナッツオイルはオメガ何ですか?」とよく聞かれますが、ココナッツオイルはどの分類にも属しません。
「オメガ」とはギリシャ語で【一番最後】を表す文字です。それぞれの脂肪酸の一番最後から、『何番目の炭素が二重結合しているか』を表しています。
オレイン酸(オリーブオイル)は一番最後から数えて9番目に二重結合があるので「オメガ9」。リノール酸(ごま油)は6番目なので「オメガ6」。αリノレン酸(えごま油・アマニ油)は3番目なので「オメガ3」となります。そして、この数字が小さいほど「酸化しやすいオイル」となります。オイル選びの際の参考にしてください。
ココナッツオイルの特性
圧倒的に酸化に強い
下の表は、ココナッツオイルがどのくらい酸化に強いのか?を検証した実験データです。各オイルに空気を送り込みながら120℃に加熱し、オイルの変性(酸化)が始まる時間を計測したものになります。ココナッツオイルはそんな過酷な状況下でも、約39時間まで変性は見られませんでした。

エネルギーになりやすい
ココナッツオイルの主成分は「中鎖脂肪酸」(MCT)です。自然界で最も多く「中鎖脂肪酸(MCT)」を含むのがココナッツオイルです。
MCTは消化・吸収される際に消化酵素の助けを必要とせず、「門脈」を通って直接肝臓に運ばれます。そのため即座にエネルギーとなります。また、一般的な植物油の長鎖脂肪酸より中性脂肪になりにくい特徴があります。
ココナッツオイルに含まれるMCTは約60%で、残りは複数種類の長鎖脂肪酸で構成されています。そのため、多く摂りすぎてしまうと長鎖脂肪酸の摂取量も増えるため、日々のお食事のバランスをみて量の調整が必要となります。(食事以外でオイルを摂る場合、1日あたり大さじ2~3が目安です。他のオイルも摂取されている場合は、この量を超えないように加減してください。)

抗菌・抗ウイルス作用がある
中鎖脂肪酸(MCT)には、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸があります。これらの脂肪酸が体内に取り込まれる過程でさらに細かく「モノカプリル」「モノカプリン」「モノラウリン」という物質に分解されることで、抗菌・抗ウイルス作用が活性化することがわかっています。
特に、モノラウリンにはとても高い抗菌・抗ウイルス・抗真菌効果があります。また腸内で悪玉菌を減らし、善玉菌を活性化させるため腸内環境を整えるという働きもあります。
モノカプリル・モノカプリン・モノラウリンはそれぞれ異なる抗菌・抗ウイルス作用を持っているため、この3種類が相乗効果でより高い効果を発揮します。
ケトン体を作り出す
ココナッツオイルの特長成分である中鎖脂肪酸(MCT)は、ブドウ糖に代わる第二のエネルギー源として注目されている「ケトン体」の生成にも役立ちます。ココナッツオイルを日常的に摂取することで、極端な糖質制限をしなくてもケトン体を生み出しやすくなります。
ケトン体の働き
・ケトン体が脳のエネルギー源になる
長らく脳のエネルギーはブドウ糖のみと言われてきましたが、ケトン体も「血液脳関門」を通過することができることがわかり、脳のエネルギーとして使われることがわかってきました。そのため3型糖尿病と呼ばれ、ブドウ糖が脳で使えなくなり記憶障害などを引き起こすアルツハイマー病の予防や改善が期待されています。

・長寿遺伝子「サーチュイン遺伝子」のスイッチをONに
ケトン体によってサーチュイン遺伝子の働きが活性化されます。サーチュイン遺伝子には、老化やがんの原因とされる活性酸素の抑制、病原体ウイルスを撃退する免疫抗体の活性化、全身の細胞の遺伝子をスキャンして修復、などさまざまな老化を防止する機能があるとされています。

サーチュイン遺伝子の機能
・オートファジーが活性化
オートファジーには、細胞内の「ゴミ処理」をする役割があり、異常なたんぱく質やミトコンドリアなどを生まれ変わらせる働きがあります。この働きにより細胞や組織、器官の機能が活性化し、病気になりにくく若々しい体になります。
・ミトコンドリアが増える
ミトコンドリアは「細胞内の発電所」と呼ばれ、細胞の中で「ATP」というかたちでエネルギーを作り出しています。このミトコンドリアが増えることによって、より細胞が活性化され、病気になりにくい体になります。また、エネルギー生産量が増えるので太りにくい体質になり、寿命が伸びるとも言われています。
ケトン体を作るには?
通常、ヒトが活動するためのエネルギーを作りだす方法は、ブドウ糖からグリコーゲンへ分解される「糖質回路」と、脂肪からケトン体が作られる「ケトン体回路」があります。

糖質の方が簡単にエネルギーに変換されるため、普段は糖質回路が優位になっていて、ケトン体回路はあまり働いていません。ケトン体回路を働かせるには、通常断食や糖質制限をすることで体内の糖質を枯渇させる必要がありますが、中鎖脂肪酸(MCT)を日常的に摂取することで体内のケトン体が増え、ケトン体回路が働きやすくなることがわかっています。
「体に取り入れるものは、できるだけ自然なもので摂取したい」と思われている方が多いのではないでしょうか?
